この項目で採りあげる「成績」は、前の項目までとちょっと性格が違います。違いはどこにあるかといえば、その成績は「自分の手元に置いておけない」ということになるでしょう。これまで採りあげてきた成績は、テストの点数であれ、通知書の数字であれ、必ず本人や保護者の方の手元へ戻っていきます。いわば、今まで採りあげてきた成績が「内」のものだとしたら、ここで採りあげる成績は「外」のもの、と言っていいかもしれません。
「外へ出て行く成績」、それは「調査書」のことです。正確には調査書の中の「学習の記録の評定及び合計評定」のことで、通常は「内申点」とよばれます(以下「内申点」という言葉で統一します)。この言葉です。生徒のみなさんも保護者の方たちも相当の意識を向け、今後の進路を決めていく上で重要な役割を果たす、と認識されている言葉は…。それならば、なおさら内申点については正しく知っておいた方がよさそうです。では、ごいっしょに勉強してみましょう。
まずは前提を確認していきますが、内申点は高校入試における合否を決定する資料の1つとして使われます。その使われ方は公立高校と私立高校では違います。公立高校の場合を考えてみましょう。2006年5月、県教委発表の「平成19年度広島県立高等学校入学者選抜の基本方針」にはこう書かれています。
選抜U/選抜の方法/調査書
a.一般学力検査を実施する5教科については、それぞれ指導要録に従って5段階で評定する。
b.音楽、美術、保健体育、及び技術家庭については、それぞれ指導要録に従って5段階で評定した評点を2倍する。
c.調査書の合計評定は、上記a及びbを合計して195分の130を乗じ、130点満点とする。
これだけではちょっとお分かりになりにくいかもしれません。下の資料は、上の説明を表や図にしたものです。aとbは下の表のようになることがお分かりいただけるでしょうか。例えば中学校3年間「オール5」を続ければ195点満点になるということを示しています。この195という数字がcの数字です。
しかし、内申点は130点満点です。これは相対評価の時から変わっていません。つまり195点を130点にするために「195分の130」、簡単にすれば「3分の2」をかけるという操作をしています。
左の図は、選抜U(一般入試)における調査書と学力検査の扱いの割合を示しています。130:125ですから、およそ1:1です。内申点を130点満点にしておくということは、1:1の比を維持しておくということにもなります。
このしくみをご存じでなかった方もいらっしゃるでしょうし、すでに同じような説明をお聞きになられたことのある方も多くいらっしゃるでしょう。ここまで、この項目はしくみの説明とすれば多少お役に立てたかもしれませんが、この話はここでは終わりません。
むしろ、この項目はここから本題に入る、と申し上げてもいいくらいです。それは、このページではまだ「成績と進路の関係」については触れていないからです。それは、進路に関わる話は、こんなに浅いものではない、という考えを背景にお伝えしています。
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