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身近なQ&A

 

日頃の当館の中でのやりとりや、メールなどでいただくご質問やご相談の中には、多くの方に共通するものがあるようです。この頁では、それらのご質問・ご相談をQ&Aの形式にしてみました。お役に立てる部分があるようでしたら、ご参考になさって下さい。

 

 

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   子どもの悪いところばかり目がいってしまう
 

Q.子どもを見ていて、イライラすることがあります。あまり言わないようにはしているのですが、ついついカーッとなって子どもに思いきり言ってしまうことがあります。先生、私はどうしたらいいのでしょうか。(高校生/中学生・複数)

 

A.家でのお子さんの様子にお困りのようです。宿題をやらないで遊んでいる、お便りや連絡帳を出さない、声をかけても返事をしない、食事をダラダラとする、夜更かしして朝なかなか起きない、きりがないほどの事例が挙がります。それぞれは大きな問題ではないにしても、それらが2つ、3つと積み重なってイライラの感情を大きく膨らませていく状況は理解いたします。

 

この問題、どこから申し上げるのが良いのか分かりませんが、申し上げることは山ほどあります。その前にお聞きしたいのは、お子さんにイライラの感情をぶつけた後、お子さんの様子が良くなったということがこれまでにあったでしょうか、ということです。おそらくないのではないでしょうか。当館では好転した事例は見当たりません。むしろ、学力の伸びがとまる、などのマイナスの部分を何度か見てきました。

 

それならば、お子さんが良い方向に変化することを期待するには、この方法は効果がないということですから、やらないほうがいい、ということになります。これが単純に導き出せる最初の結論です。これで納得いただければおしまいとなるのですが、なかなかそうはいかないでしょう。そのため、実際にお会いしての面談では、じっくりと時間をかけて結論を出すようにしています。ここでも、同様のことを試みます。

 

お子さんのことを、お子さんの立場から考えてみて下さい。現状では、中学生・高校生のお子さんの大半は、自分の価値に自信を持てていません。その日その日で会った人に言われた言葉、自分に対する視線や態度などで気持ちは変化しがちで、精神的にも不安定になりがちです。どこかに自分の気持ちを発散できる場所、安心できる場所を求めています。ケータイもそのひとつでしょう。

 

当たり前のことを申し上げますが、家は家族全員が安らげる場所です。残念ながら、安らぎの場所で安らげていない大人も子どもも多く見かけるようになりました。そこに、安らいでいない子どもが大人から矢継ぎ早に、感情の混じった言葉を向けられると、時としてそれは「攻撃」として受け取られ、すぐさま「防御」の体制を整えます。その瞬間に、家族でありながら「敵」を意識した状態になります。これで良い状態は築けそうにありません。

 

今度は、保護者の方の立場で考えます。イライラの発生する原因は何でしょうか?多くの方に共通して言えるのは、お子さんが自分の「思い通り」にならないからではないでしょうか。子育てに限らず、ストレスの発生原因は「思い通り」にならないからです。踏み込んだことを申し上げるようですが、本気でお子さんのことを考えるならば、ムッとされるかもしれないようなことを続けて書きます。

 

イライラをお子さんに向ける目的は何でしようか。お子さんのため?…でも、この方法でうまくいく事例がなかなか見つからないことは前に書きました。それでは何でしょう。お子さんが気持ちの発散する場所を必要としているように、保護者の方にもそれは必要な場所です。ただ、その場所の一部にでも我が子が含まれてはいないでしょうか。そこを穏やかに、冷静に考えてみることは極めて重要なことです。

 

大人も子どもも、いろんなところで「ダメだ」「ダメだ」と言われます。そんな中では自信など持てるはずがありません。ダメな根拠を数値で示されます。あるいは感覚的な言葉で示されます。面と向かって示されます。あるいは様々な媒体を使って示されます。そんなギスギスした環境の中に子どもは置かれがちで、それから大人である保護者の方で同じような状況を実感されている方も少なくないはずです。

 

安らぐ場所を求めているこどもたちから、様々なところでそれが奪われています。塾という業界がそれに加担しているとしたら、それは心苦しく思います。でも、当館としてはそうした動きには加勢しません。それでも現実対応はできます。むしろ、これからはその方が現実に適した対応ができます。

 

お子さんが、自分の悪いところを指摘してくる大人からの攻撃的な言葉に耳を貸さないのは、ズタズタにされた自分の自我を守るためです。「お母さん、ごめん。僕が悪かった。」こうした言葉を期待されているのかもしれませんが、それは、相手に屈して自我を放棄したくらいの出来事として、意識の中で捉えられているように思われます。そうならないように、極力会話をする場面を避ける、つまり、返事をしない、食事時間をずらすという行動になっているとは考えられないでしょうか。

 

直接の面談の場合、こうしたやりとりをしていく中で、相当時間が経過してから「先生、私はどうしたらいいのでしょう?」という質問に到達します。この時、共通して申し上げられるのは「何もなさらないことでしょう。」です。適切でない申し上げ方とは承知しているのですが、何かをしようとなさるから、かえってお子さんが良い方向に進みません。

 

例えば、身のまわりの整理ができない、約束事を守らない、人前で自分の意見がちゃんと言えない、こうした状況は社会へ出たときに間違いなく本人に不利に働くでしょう。それは、本人自身が一番よく分かってはずです。そのことを、保護者の方をはじめ他者が指摘することは、「やっぱりできていない」という現状の再認識にはなるでしょうが、「ちょっと変えていこう」という意識の改善にはなかなか結びつきません。

 

もう少しだけ踏み込んで申し上げますが、上記のようなお子さんの気になるところを正すというのは、「躾」という言葉で分類されるものです。これらは本来もっと早い年齢期に行われるものです。そして、その役割を担っているのは誰であるかもお分かりのことでしょう。ここも、お子さんのことを本気で考える上で、どうしてもはずせない前提です。こうしたやりとりがあった上で「どうしたらいいでしょう」にたどり着きます。

 

先に「何もなさらないこと」と申し上げたのは、打つ手がないということではありません。むしろ、有効な方法が残っています。それは、ご自身の役割をしっかりと果たし、その姿をお子さんに見せる、それだけでいいのだと思います。それを続けていくのには、ちょっとの覚悟、あるいは決意が必要です。でも、お子さんにもそれを求めているのですから、やはりお互い様ということになるでしょう。

 

子どもたちの感性は間違いなく鋭いです。大人の様子を高感度のアンテナで受信してしっかり見ています。大人が共感できるような姿を見せれば、子どもは「自分もああなりたい」とお手本にします。何も言わなくても、放っておいても勝手に成長していきます。お子さんにはそういった能力があることを信じてあげられれば、それだけでも状況はかなり変わると思います。

 

加えて、大人は子どもに不平・不満を言う姿をあまり見せない方がいいと思われます。中学生・高校生の就学期では、真似をする可能性が高いからです。残念ながら「お手本」にはなり得ません。おっしゃるならば、聞き手に子どもが交じっていても、対等に意見を求めるくらいのスタンスが望ましいです。たとえ、反対の意見が返ってきたとしても、それが相手の意見だと受け入れる心のスペースが必要です。

 

いろいろな方向から申し上げてきました。最後の結論は、「不要なことはしない。」そして、「ご自身が必要なことをやる。」これだけだと考えます。読んでいただいた方のお役に立てることを望みます。

クョスコニョ    [1] 
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