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  「紛争と平和の中の子どもたち」
 

戦争とドイツ平和村の子どもたち 〜絵本『マリアンナとパルーシャ』展〜

 8月18日、青葉学習館の小中学生と広島市商工センターにある泉美術館で開催されていた「戦争とドイツ平和村の子どもたち〜絵本『マリアンナとパルーシャ』展」へ行ってきました。ちょうどこの日は、広島出身の女優で絵本の作者でもある東ちづるさん本人による、トークと絵本の読み聞かせ&サイン会も行われることになっていました。会場には100人を超える観客がつめかけ、東さんと進行役の西田篤志さんとの軽快なトークを楽しみ、また、平和村の話に目を潤ませていました。


 ところで、「ドイツ平和村」とは何かご存じでしょうか?それは1967年、ドイツ北西部オーバーハウゼンに創立されたボランティア団体です。主な活動は、戦争で傷ついた子どもたちを平和村に引き取り、治療・リハビリの後、母国へ返すことで、運営は全て募金で成り立っています。


 東さんは、「世界ウルルン滞在期」というテレビ番組のロケでそこを訪れ、戦争で傷ついた多くの子どもたちに出会いました。そして、世界の現状と平和村を伝えるために、『わたしたちを忘れないで〜ドイツ平和村より』と絵本『マリアンナとパルーシャ』を出版し、その売上金の一部を平和村への募金にあてています。また、その絵本の原画と平和村の子どもたちの写真で構成されたチャリティー展示会を、全国で開催しています。


 今回わたしたちが訪れた会場にも、絵本の原画と「ドイツ平和村」の子どもたちの写真や資料がたくさん展示してありました。写真の中にいたのは、アフリカ・中東・アジア地域の子どもたちです。地雷で手や足を失った子ども、爆弾で頭や体をえぐられた子ども、兵士にバーナーで顔を焼かれた子ども、ナイフでのどを切られた子ども、化学兵器の影響で眼球のないまま生まれてきた子ども、……みんな青葉学習館に来ている子どもたちと同じ年頃の子どもたちです。違うのは、生まれた場所が紛争地帯だったというだけのことです。今回参加した子どもたちも、そのことの意味に気づいていたのでしょうか。真剣な様子で言葉もなく一枚一枚の写真を見ていました。

 

 

 ここからは、東ちづるさんのお話の中から印象に残った事について紹介します。

 

1.平和村へ連れて行く子供の条件


 戦地で傷つき、治療を願う子供たちは大勢います。しかし、飛行機に乗れる人数にも、平和村に収容できる人数にも限りがあります。スタッフは、何百人と集まっている子供の中から、平和村へ連れて行ける十数人を選ばなくてはなりません。

 

 その条件の一つは、親が生きている子。帰国した際、引き取る家族が必要だからです。そしてもう一つは、ドイツに連れて行っても生きていられそうな子。ひん死の状態の子は連れて行きません。なぜなら、家族のもとで死なせてやるほうが、その子の幸せだと思うからです。これらの条件を満たす子供の中から、十数人を選ぶのです。

 

 どの親も、自分の子を助けてほしいと懇願します。ほとんどの子供が、このままだと確実に命を失ってしまう状態です。しかし、全員を救うことはできません。選ばれなかった親子も、選ぶ側のスタッフも、ともに地獄です。

 

 だから、平和村のスタッフは“この世から平和村がなくなる日”を心から願っています。それは、戦争で子供たちが傷つくことがなくなり、平和になるということですから。


2.第二次世界大戦の反省が平和村を支える


 平和村では、職員とともにボランティアの方も多数活動しています。子供たちはドイツへ着くと、すぐに救急車で病院に運ばれ手術を受けます。入国審査はありません。パスポートも必要ありません。ドイツ政府の協力があるからです。そして、救急車の隊員も、医者も、看護師もみんなボランティアです。

 

 平和村の子供たちの手術、治療、義足などの処置はすべて無料。300以上の病院が各3名程度のボランティアを引き受けています。日本人から見ると、「すごいなぁ、えらいなぁ」と思ってしまうことですが、ドイツの人にとっては、ボランティアは特別のことではなく、日常なのです。そして、その精神には第二次世界大戦の反省が関係しているのだそうです。

 

 ドイツの学校では、第二次世界大戦を一年半かけて学びます。教科書も第二次世界大戦関連の部分だけで1p以上の厚みがあり、詳細な内容が詰まっています。生徒たちは、戦争がなぜ起きたのか、どうなったのかという真実を教わり、どうするべきだったか、そして、今の自分たちは何ができるかを考えます。

 

 教師は、自分の考えは一切伝えません。ひとつしかない真実を教えるだけ。生徒が自分で考え、自分自身の考えを持って行くのです。そこから生まれた福祉や人権についての考えが、平和村への協力にもつながっているのです。 

 

3.日本に平和村はつくれないか?

 

 トークと読み聞かせの後、観客の質問に東さんが答える時間がありました。そこで、ある女性が「日本にも平和村をつくったらどうですか?」と提案されました。たしかに日本もドイツ同様に敗戦から復興を遂げた国であるし、医療面や物質的な面から見ても可能ではないかと思われました。

 

 しかし、それに対して東さんは「日本で平和村を作るのは無理」と、きっぱり言い切られました。なぜ?…子供たちのパスポートの問題など、政府の協力を得るのが難しいのだろうか?−などと考えていた自分が甘かった。−一番の問題は、日本の制度などではなく、日本人の意識にあるのだそうです。 

 

 平和村はその性質上、空港の近くなど交通の便のよい所、かつ病院に近い所になくてはなりません。つまり、街の中にあることが望ましいのです。四肢を失い、ひどい傷を持ち、病気のキャリア(保有者)の可能性もある多くの子供たちを自然に受け入れてくれる地域が日本にあるでしょうか。だから、もし政府の協力が得られたとしても、その周辺の住民の理解は得られないだろう、ということでした。

 

4.平和村に一番必要なものは?

 

 ボランティア活動で救援物資といえば、すぐに浮かぶのが衣料や食料。しかし、それも受ける側によっては、ありがた迷惑になる場合もあります。平和村が寄付されて困るのは“オモチャ”。けんかの原因にもなるし、子供たちの母国にはないものだからです。衣料も大量に倉庫に眠っているようです。中古品なので売るわけにもいかず、ましてや捨てられず…。物を送るのは、かえって迷惑のようです。

 

 では、平和村が本当に必要としているものは何でしょうか。それは“お金”。子供たちの渡航費・食費・平和村の運営費−平和村の存続は募金にかかっています。そして、資金があれば、もっと多くの子供を救うことができるのです。 前回、ドイツのボランティア事情について触れました。日本にくらべてかなり進んでいます。しかし、日本人に善意がないわけではありません。思いやりも優しさも持っています。ただ、「気持ちだけでは、何も変わらない。現実を知りながら、かわいそうだと思いながら、何もしないのも罪。平和を願うだけでは何もならない。」と東さんは言われていました。

 

 今、ドイツ平和村には「ヒロシマ通り」という小道があるそうです。「ウルルン」放映後に日本から多くの寄付が寄せられ、その感謝のしるしとしてつくられたそうです。ここでも、気持ちは形になっていました。

 

 最後に、「ドイツ平和村募金」冊子に書かれている東さんのメッセージをお伝えします。


 『この子たちにガンバレとは言わないで下さい。ガンバルのは今は平和な国に住む私たちです。ぜひ、エールを募金に。 東ちづる』

 

ドイツ国際平和村HP(日本語)
  
http://www.friedensdorf.de/welcome3.html 

クョスコニョ    [1] 
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