毎年夏休みの前になると、高校入試セミナーという名前で受験生のみなさんと保護者の方をお招きしてお話をしています。学習塾がこの手のタイトルで話をするとなると、およそ話の流れは察しがつきそうです。ワクワクするような内容はあまり期待できません。自分でも聞き手には回るのは遠慮したいと思うかもしれません。
そのように思われがちの話を、わざわざ聞きに来ていただくのですから、できるだけ「予想に反する」内容を提供出来るよう心がけています。もちろん奇をてらうだけではなく中身のあるもので、です。そうしてお伝えしたのは「ライオンの話」です。こんな話です。
先生「君たちはライオンが見たいですか?」
生徒「見たーい。」
先生「でも、近くで見るときっとこわいですよ。」
生徒「こわくなんかないよ。」
先生「じゃあ、動物園へ行きましょう。」
生徒「やったー!」
動物園へ着いた生徒たちは大はしゃぎです。サルやゾウ、そしてキリンやトリなどを楽しそうに見て回ります。そしていよいよお待ちかねのライオンのオリが近づいてきました。さぞかしワクワクしていることだろうと思えば、ちょっと様子が違います。歩くペースがだんだんと遅くなってきました。
先生「さあ、いよいよお待ちかねのライオンですよ。」
生徒「別にライオンなんか見たくないよ。」
先生「でも、みんな見たい見たいって言ってたじゃない?」
生徒「さあ、そうだったっけ。とにかく見たくないもん。」
先生「まあそう言わないで見てみよう。ほらっ。」
先生がみんなをオリの前へ近づけようとすると、バタバタと抵抗します。中には泣き出す生徒まで出てきました。やむなくライオンのオリの手前で足止めとなりました。どうしたものかと先生も途方にくれています。そうしている間に閉園の時刻が近づいてきました。やむなく動物園を出ようと出口をさがしはじめました。そして生徒が出口を見つけました。
生徒「先生、出口あるよ。」
先生「そうか、じゃあ出ようか。」
生徒「うん…、出るよ。でもー…」
先生「でも、どうしたの?」
順路の最後にあるライオンのオリの手前で見つけた出口は、当然ながらその向こうにあって、動物園から出ようと思ったらどうしてもライオンのオリの前を通らなければならない構造になっていることに生徒たちは気がついたのでいた。
賢明な生徒のみなさんと保護者の方たちは「ライオン=高校入試」と置き換えて話の流れを読んでいます。解説は要りません。その後の具体的な話もこちらが恐縮するくらい真剣に聞いていただいたのでした。でも、もし青葉の受験生の生徒さんがこれを読んでおられたらこう言うかもしれませんね。「先生そんな話していないよ」と。
そうです、これは今年の話ではありません。その時その時に必要と思われる話をお伝えしていますから、この時はライオンでした。そして今年は何だったかと言えば、「えんぴつ」でしたね。この後すぐ続きを書いていきます。
(07.7.26)