明日は、いよいよ公立高校入試の日です。昨日までは受験を控えた生徒たちと「直前講座」という最後の追い込みの授業を行っていました。自ずと緊迫感の漂う雰囲気になりながらも、周りへの心配りも欠かすことなく、お互いに支え合い助け合ってここまでやってきました。
そして、最後の授業の時がやってきました。見ると目を真っ赤にしている子もいます。こみあげるものを抑えながら授業を聞いてくれています。冷静を装いながらも、こちらも気持ちが揺れはじめています。何とか無事終了の時間までこぎ着けることができました。
ここ数日間、入試という同じ方向に向かう生徒たちの間には、大きな力に包まれた一体感が感じられました。揺れる思いを内に抱えながらも、お互いが内側を隠し合うのではなく、オープンにしているといった感じです。荒波の中のイカダが流れに任せるだけでなく、互いをつなぎ合わせて巨大なイカダとなり、みんなで荒波を乗り越えているイメージです。
心動かされる場面は数日前から見られました。2日前に一足先に最後の授業となった社会の授業のあと、別れを惜しむ生徒に手を広げて差し出したN先生の胸に飛び込んだその子は、顔をクシャクシャにして泣きじゃくっているのでした。また、その子が泣かせるようなことを言うからいけません。「その涙は、うれし涙のために取っておきなさい。」と言うのが精一杯です。
昨日、最後の授業が終わった後、別の部屋ではすでに内定が決まっている子たちが高校へ向けての勉強を終えて控えていました。みんな、これから入試へ向かう生徒たちと仲良しです。全員教室へ入り一言ずつ激励メッセージを送ってくれました。やはり涙顔が見えます。それぞれが今の自分の状況の中で心の交流を行っています。
その後、毎年恒例となっているI先生手作りの「守りの青葉」が一人ひとりに配られます。少しでも心の支えになれば、という思いのささやかなプレゼントです。これを受け取って生徒たちは青葉でのカリキュラムを終え、それぞれ別れていきます。今年は先ほど激励してくれた子たちのアーチの出口つきです。
しかし、これでエンディングではありませんでした。生徒たちがなかなか教室から出てきません。見ると、先ほど配られた「守りの青葉」につい先ほどまで勉強していた者どうしが、お互いに激励メッセージを書き込んでいるのです。それを見て、アーチをほどいた子たちも書き込みの輪に加わりました。予想もしていなかった光景です。この子たちはこれまでも、こうやってシナリオを自分たちで作ってきた子たちです。
どれくらいたったでしょうか、30分足らずの時間が長く感じられました。その間に涙腺を刺激するような会話があちこちで聞かれました。でも泣くなと言っているのに、こちらが泣くわけにはいきません。下で待っていらっしゃる保護者の方たちのことを気遣い、早く帰るよう促すだけでした。
明日は入試です。これまでひたむきに勉強と向き合ってきたみんなに精一杯頑張ってほしいと思います。そして、改めてこの子たちとともに学べたことを誇りに思います。
(08.3.5)