新年度を迎えて、生徒さんたちは新しいスタートを切られたことでしょう。新しい学校、新しいクラスと、それぞれが新しい環境の中で新しい生活が始まりました。みなさん、もう慣れた頃ではないでしょうか?
新しいクラスでは、いろいろな係も新たに決められることでしょう。例えば学級委員、クラスの中からたくさん立候補者が出てくれば良いでしょうけれど、実際にはなかなか立候補する人がいない場合もあるようで、相互推薦で決めていく場合もあるようです。
ところが、ある地域の中学校3年生のクラスでは「立候補者がいっぱい」という話を耳にしました。クラス担任の先生が、学級委員や他の役職に立候補したい人に挙手を求めると、大多数の生徒さんたちが手をあげたというのです。やる気のある生徒さんが多くいて、良いことのように思えますが、どうも様子はそれとはちょっと違っていたようです。
生徒さんたちが興味を示して、ご担任の先生が危惧されたのは、一言で言えば「内申点狙い」。どうやらそのようなのです。「中3で何らかの役職に就いておけば、それは自分の調査書に記載され、いずれ高校入試の時に自分にとって有利になる」という意識が背後に働いている、という前提でのやりとりとなっているのです。
この場面で、「役職につくと、入試で有利に働くらしい」という噂に、いちばんの関心が向けられているのは異様に思われます。生徒さんは「だって、本当にそうなんでしょ?」と「イエス」の答を引き出そうとし、先生は「そんなことはない!」と「ノー」の姿勢を貫こうとされます。本来この場面にふさわしい「どんなクラスにしていこうか」ということからは、いったん意識が離れた状態です。
ただ、このことを傍観することもできそうにはありません。できる立場にはないと言った方がいいかもしれません。学校のこの場面で、「役職につくと、入試で有利に働く」といった情報を、生徒さんたちはいったいどこから手にいれたのでしょうか?その情報源の有力な候補者が「学習塾」ではないか、という疑念がこの場面に働いていたようです。
このことで、二つ採りあげたいことがあります。一つは「この情報は本当なのか?」ということ。何をもって「有利」になると判断するのでしょう?…例えば、役職に就任すると得点化されて調査書に記載されることを期待するのでしょうか?もしそうならば、もっと正確な情報を提供していただいて、それから期待をするべきでしょう。
不確かな部分はたくさん残っているはずです。例えば学級委員になると全ての学校が一律に数値化して同じように扱うのでしょうか?クラブの部長の場合はどうなのでしょうか?ボランティアは認めてもらえないのでしょうか、これら一つ一つのことにそれぞれ「格つけ」がされているのでしょうか?…それに、そもそも調査書・内申点がどんなものなのか全体像の提示はあるでしょうか?そうでないと「有利」という言葉だけを目の前にして踊らされるだけにもなりかねません。
(当サイトでは、調査書・内申点について、事実から目をそらさず、客観的に情報提供を心がけたページがあります。ご参考になるようでしたら、ご参照下さい。「内申点の影響力」)
それともう一つは「仮に『役職につくと、入試で有利に働くらしい』ということが本当にあったとして、それをもって生徒さんに立候補を勧めることは本人にとっていいことなのだろうか?」ということです。たとえ、その生徒さんが状況を有利にして希望の学校に合格したとしても、メリットはそこまでです。そこから先に本当に実力が問われることになるでしょう。
毎日のニュースを見ても、あれやこれやと日々目まぐるしく動いています。大きな変動も様々な分野で起こりそうな実状です。そんな中で、とりあえず目の前の課題を上手く回避する術に長けることばかりを教わり、あるいは大人が伝えていくことは生徒さんの将来に本当に役立つのか気がかりなところです。
みなさんは、どのようにお考えでしょうか?よろしければご意見をお聞かせ下さい。
(08.4.25)