当館がお盆休み中の空いた一日を使って、岩国市の錦帯橋周辺一帯を散策してきました。久しぶりの訪問だったのですが、とても心地よさを感じました。観光客も多くにぎやかではあるのですが、その空間の中だけ時間がゆっくりと進んでいるようにも感じられました。
錦帯橋周辺には、大きな噴水のある公園や、吉川氏の資料館、そして錦川を見下ろす遊歩道など、いくつも見所があります。その一帯の所々に、佐古先生をはじめ、建立委員会の方々が、何基かの言葉の刻まれた石碑を建立していらっしゃいます。今回はこれらの石碑を探して目にしてみようと訪れてみました。
これらの石碑には何が刻まれているかと言えば、岩国にゆかりのある先人たちの言葉です。その言葉は、若い人たちの励ましとなったり、指針となることを願って建立されているようです。錦帯橋側から噴水を通り越して、山の麓にある駐車場に車を止めて、公園に入ってすぐに見つかったのが次の石碑です。
澄川 喜一さんという方の言葉だそうです。こう書かれています。
日本人の心の深層には
物と語り合える優れた感性がある。
その上に
自然の恵みを共有する思いやりがある。
物や自然を大切にしてきた日本人は、人との出会いと同様に、物との出会いを得るということを記されています。(この方は、スカイツリーをデザインされた方だそうです。)
噴水を通り過ぎて、吉川氏の資料館の周辺もゆっくりと散策しました。全部は紹介できませんが、その間にも何基かの石碑を目にしました。それぞれが何かを語りかけています。緑が溢れるその一帯には、観光客の声やセミの鳴き声もまた溢れていたのですが、なぜか静寂が感じられました。
さらに足を進めていくと、土手が見えてきました。上った先には「桜のトンネル」と呼ばれる遊歩道になっていて、錦川を見下ろす場所にあり、錦帯橋が少し遠くに見えます。そこにも石碑を何基か見つけることができました。次が、その中の一つです。
作家の宇野千代さんの言葉です。こう書かれています。
いま
あなたの上に
現れている能力は
氷山の一角。
真の能力は
水中 深く深く
隠れている。
これは、若い方がじっくりと味わって読まれたらいいと思いました。また別の機会に詳しくと思いますが、若い人の中に自分の能力を過小評価している人が多いというのは、その通りだと思います。だから、「そんなことはない。もっと自分の能力を信じろ。」と勇気づけるのはいいことでしょう。
でも一方で、その人の能力を一方的に断定し、行動する前に評価を加えて、評価を越える行動を期待しない、あるいは無意識に規制する「勇気くじき」も相当受けているように思えます。大人は知らず知らずこれをやっている、ということを教育の現場にいて実感するところです。ちょっと脱線してしまいました。
それから、川沿いの道を錦帯橋の見える方へと歩いていきました。右手には噴水のある公園が見えます。しばらく橋を眺めた後、噴水の方へ向かいました。水しぶきを上げる巨大な噴水の下では、子どもたちが水遊びをしています。元気よく遊ぶ光景に思わず微笑んでしまいます。
どれくらいいたかと言えば、半日もいなかったでしょう。でも、丸一日かけた旅のように時間がゆっくりと感じられました。そして、気持ちもゆったりすることができました。こんな時間も必要だな、と改めて思った次第です。
(2011.8.17)