『食育』という言葉を聞かれたことがあるでしょうか?…これは「食に関する教育」のことです。2006年6月10日に「食育基本法」が成立し、「知育・徳育・体育」と並んで教育の基本に位置づけられました。これには「『食』に関する知識と『食』を選択する力を習得し、健全な食生活を実施することができる人間を育てる」とあります。
「なかなかいい法律だな」と感じられるかもしれません。しかし、他の見方をすると、こうした法案を国の法律として成立させなければならないほど、日本の『食』、子どもの食生活が危機的状況にあるということです。
生物のからだは『食』によって作られます。食べたものが肉体になるのです。そして、子どもにとってはからだの発育のみならず、脳(=精神)の発達にも影響のある大切な問題なのです。
昨今、食の安全性の問題・不規則な食生活が原因の生活習慣病のまん延などが、テレビ・雑誌等でも騒がれています。しかし、『食育』という言葉の知名度はまだまだ低いようです。今後も『食』と子どもの発育について関することを折に触れて採り上げていきます。
今回は「朝食」について採り上げます。
Q.学校に行く前に朝食をとりますか?
学年別回答結果
このデータは、国立教育政策研究所というところが調査した「平成15年度小・中学校教育課程実施状況調査」によるものです。調査対象は、小学生が各学年約10万人ずつ、中学生が各学年約8万人ずつです。
左の円グラフは、「学校へ行く前に朝食をとりますか?」という質問に対する児童生徒の回答の中から、小学5年、中学1年・3年の回答をグラフ化したものです。
ごらんのように、朝食を必ずとる児童生徒は学年が上がるに連れて減っていく傾向が見られます。中学3年になると、必ず朝食をとる生徒は10人中7人に過ぎないことをグラフは示しています。
朝食をとらない背景には様々な状況があることでしょうが、ここでは学習への影響を見てみます。下の柱状グラフは、朝食をとる状況とペーパーテストの得点結果の関連を分析したものです。これをどのように理解されるでしょうか?
ひとつは「朝食を食べた方が得点が高くなる」というデータ通りの見方があります。その通りですが、曲解すれば「食べた方が得」という解釈になります。でも、もう一歩踏み込むと「朝食を食べていないと脳が働かない」、すなわち児童生徒の脳の発達にも悪影響を及ぼしているという深刻な現状に直面しているという解釈もできるのです。
得点との関連/算数・数学平均得点
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