小・中学生の勉強する内容がここ2〜3年で増えてきています。ご存じの通り、これまで小・中学校では勉強する中身を細かく決める「学習指導要領」の改訂が進められてきました。小学校では昨年それが完結し(新指導要領完全実施)、中学校でもいよいよ今年2012年度から、つまりこの4月から完全実施が始まりました。
2009年度から今日までは、小・中学校ともに新しい学習内容を理科・数学を中心に少しずつ増やしつつ、新学習指導要領への切り替えがスムーズに進むよう図られてきました。これまでは、その経過部分(先行実施期間)にスポットを当てながら、完全実施までの流れを追ってきましたが、これからはその部分の記載はあまり必要ではなくなります。(過去の経過はこちらに詳しく記してあります。)ここでは、新指導要領によるこれからの学習の動向を中心にして記載していきます。
書き進めていく前に、一つ書き添えておいた方が良いと思うことがあり、ここに記載しておきます。まず、一言で申し上げるなら「煽るような記載は、ここには致しません。」ということになります。
新しい学習指導要領に関わるニュースや記事は、「これから大変になるよ」という論調になりがちです。それを学習塾のような民間から教育に関わる機関が触れるとなると、ここぞとばかりに数値などを散りばめながら大変さを強調して、何らかの意図する方向へ誘導するのでは、と思われても不思議ではありません。
当館が記しますこの文面では、「誘導的な記載はしません」といった宣言を最初に記載して残しておきます。事実は事実としてお伝えしますが、そこに主観的なあるいは誇張した表現を用いることは致しません。どうぞ、ここでは警戒心を持つことなく有用と思われる部分を安心して読んで頂ければ幸いです。
■新指導要領で変わること
1.授業時数が増加します
●教科別に見て
5教科の時間数が、3年間の合計で360時数増加します。
※総合学習・選択教科の時間は減少します。
外国語(英語)の授業時数は他の教科より増加の度合いが大きくなります。
●学年別に見て
1回の授業を1コマと呼ぶことにすると、全学年とも1週間あたり1コマ増加(週28コマ→週29コマ)します。
特に中3では5教科合計で週3コマ増加(13.7コマ→19コマ)、年間で185コマ増加と(480コマ→665コマ)なります。
●6時間授業の日が、週3日から週4日へ
上記のグラフ等のデータは「学校教育法施行規則」、つまり文部科学省から発表された数値に基づいたものですから、資料を作った人によって数値が変わるということはありません。ただ、このデータが授業時数が増えることを示しているのは紛れもない事実であって、その部分をことさら強調すれば、「今後の学習は大変になる」と印象づけることも可能です。ここでは視点をちょっと変えて、授業時数の増加について次に見ていきます。
●以前と比較してみて
右のグラフは戦後、中学校の授業時数がどう変わってきたかを示したものです。それぞれの年代は、以下の通りです。
前@ →1962年度〜1971年度
前A →1972年度〜1980年度
前B →1981年度〜1992年度
前C →1993年度〜2001年度
旧課程→2002年度〜2011年度
新課程→2012年度〜
ごらんの通り、昔の中学生の方が授業を多く受けていたことが分かります。保護者の方であれば、ご自身の頃とお子さんの授業時数を比べてみることもできるでしょう。新課程は、一つ前の課程から見れば大幅な授業時数の増加と言えますが、ずっと遡って見てみると決して飛び抜けて多い授業時数ではないことも分かります。
戦後、高度経済成長を続けてきた日本では学習に対する関心が高まる土壌が徐々に成熟してきていました。その後成長が一段落してくると、関心がモノにだけでなく心にも寄せられるという側面が出てきました。「ゆとり路線」とも呼ばれました。こうした流れを背景に今回の新しい学習指導要領が登場しました。授業時数からこの流れをみると、「上がって下がって、また上がる」とまとめてもよさそうです。
(*本稿は、随時加筆していきます。)