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ちょっと休憩室で…

 

 

ホームページを気を入れて作ってみると、「こんなにエネルギーを使うものか」と実感しました。ささやかなサイトに過ぎないのですが、それでもです。

このページは、特にテーマを設けず、その時々のことをちょっと息を抜いて書き込ませていただく、という制作者が休憩させていただく勝手なページです。申し訳ありません。

 

 

 

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   ハーメルンの笛吹
 

グリム童話の中に「ハーメルンの笛吹」という話があります。このお話ちょっと不思議で、どうにもつかみ所が分かりにくく、それでいて妙に気になってしまう内容なのです。

 

ストーリーは簡単で分かりやすいのです。それは、ドイツのハーメルンという町に道化師のような格好をした笛吹が現れ、子どもたちをさらっていき、町の中には子どもが一人もいなくなる、という話です。

 

ハーメルンの町中に現れた笛吹は路上で笛を吹き始め、その音色に引き寄せられるかのように、町中の少年少女が笛吹き男のもとへ走り寄ってきます。そして、集まった130人の子どもたちは、笛の音に合わせて通りを踊り歩きながら男のあとをついていき、町から出ていき笛吹き男とともに消え失せてしまいます。子どもたちを失った親たちは悲しみにくれ、町全体がひっそりと沈みかえってしまうという何とも悲しい結末です。

 

まず、このストーリーから読み手は何を受け取ったらいいのでしょうか?この笛吹が町中の子どもたちをさらっていった目的は?…集団催眠のように子どもを操る笛の音色が意味するものは何か?…分からないことがいろいろと出てきます。やがてこの物語は3世紀の長い年月を経て、次のようなストーリーが冒頭に付け足されます。

13世紀の末、ドイツの町ハーメルンには町中にネズミがあふれ、捕まえても捕まえても一向に減らず、町の人たちはネズミの被害に悩まされていました。いい解決法が見当たらずみんな頭を抱えているところに、道化師のような格好をした笛吹が現れます。

 

その男は、自分がネズミを全部追い払うことができたら、何かお礼をしてくれるかと町の人に尋ね、町の人々は成功したら必ずお礼をすることを約束します。約束を取り付けた笛吹は路上に立つと笛を吹き始め、その音色につられて町中のネズミが笛吹のまわりに集まってきます。

 

集まったネズミたちは、笛の音に導かれるようにして笛吹き男のあとをついていき、町の外へと出ていき川のほとりまで連れていかれます。そして、ネズミたちは笛の音に陶酔したような状態で次々と川の中に入っていき、やがて一匹残らず溺れて死んでしまいます。

 

約束通り、町からネズミを追い払った笛吹はハーメルンの町へ戻ってきます。ところが、町の人々はお礼を言うどころか、そんな約束をした憶えはないと言い、お礼をするつもりなどまったくありません。だまされたことを知った笛吹は険しい表情に変わり、そのまま町から出て行きました。

こうして月日のしばらく経ったのちに、ネズミを追い払った道化師のような格好をした笛吹が、再びハーメルンの町へ現れるところから原作へとつながっていきます。これによってストーリーに厚みは増しますが、読後に残るのはやっぱり不思議な感覚で、人によっては薄気味悪さが残るのではないかと思います。

 

もし、この物語を子どもに読み聞かせてあげたとしたら、大人はどんな言葉を子どもに添えてあげたらいいでしょうか?…たとえば「約束を破るとね、結局は自分が悲しい目にあうんだよ。だから、約束は守らないといけないよ。」こんな感じになるでしょうか?これなら、教訓として子どもに語ることができます。そのために、原作にストーリーが追加されたのかもしれません。

 

ここから先は、「ひねくれた視点」でこの物語を考えてみます。その視点とは、「この笛吹き男は、善人か、悪人か?」もっと言えば「何者だったのか?」それだけです。彼のやったことは、「ネズミを退治したこと」と「子どもをさらったこと」の2つです。普通に考えると、ネズミ退治は良いことで、子どもさらいが悪いことです。同じ人が、良いことも悪いこともやったことになるのです。

 

もっとも、立場を変えていろいろ見ると、子どもをさらったのは町の人々にだまされた報復措置だとして擁護するかもしれないし、もっと深く見て、人智をを超えたものの怒りに触れたと理解するかもしれません。あるいは、逆にネズミ退治を「営利目的」の「動機不純」な行為として善行とは認めないこともできます。また、発想を思いきり変えてネズミの立場からすれば、笛吹は自分たちを仲間とともに甘美な音色で包み隠して、残忍な大量殺戮を行った「極悪人」と見ることも可能です。

 

いろいろな見方が可能で、この笛吹き男の実像をなかなか焦点を定めてイメージすることができません。善人か悪人かもよく分かりません。ただ、ネズミを消滅に導くのにも、子どもを消滅に導くのにも、笛吹は「笛を吹く」という同じ行為しかしていないことが分かります。子どもを「良きもの」、ネズミを「悪しきもの」と捉えたとして、同じ行為で同じ結果に導かれていっていることに気づきます。

 

善を魅了する音色と悪を魅了する音色が、全く同じ笛から発せられています。善悪を問わず、すべてを魅了する全対応型の万能の笛です。その「惑わしの笛」は、瞬く間に「バーチャルワールド」を作り上げ、その導く先はすべてに公平で必ず「破滅」です。史実に基づいて作られたこの物語は、いったい何を伝えようとしたのでしょうか。妙に気になります。

 

ハーメルンの笛は、今の世においてもなお、いたるところで吹き鳴らされているような気がします。甘美な音色で多くの人を魅了しています。決してその後をついていかないよう、しっかりと目を開いていようと思います。

(08.12.14)

 

クョスコニョ    [1] 
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