○学習指導要領は最低基準
学習指導要領に示す「各教科,道徳及び特別活動の内容に関する事項は,特に示す場合を除き,いずれの学校においても取り扱わなければならない。
学校において特に必要がある場合には,(学習指導要領に)示していない内容を加えて指導することもできる」
現学習指導要領 総則/抜粋
■学習内容の増減の実際
下の図は、左側が学習内容が削減されて現在の学習量となっていった経過で、右側が、今後学習量の増加にともなって、新しい学習量になっていく経緯を簡略化したモデル図にしたものです。
現在の小中学生の学習量は、2002年以前をIとすると、およそFほどとなっています。削減されたBの部分は、算数・数学での「場合の数」や「不等式」のように上の学年、学校へ移行されたものや、「台形の面積の公式」のように、「自ら考える力」(?)と引き替えに削除されたものがあります。
前回の学習指導要領改訂では、学習内容の削減とともに土曜日の授業がそれまでの隔週実施から完全になくなったことで、週あたり2時間ずつ授業時数も削減されました。しかし、学習内容のいわゆる「3割削減」は授業時数の削減よりもまだ多い量であって、そこには「総合的な学習の時間」という新しいスタイルの授業が、改革4本柱の一本として充てられてきました。
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(上からの続きです)
これまでの学習量削減の方向へ向かう改訂は、「現在やっていることを学習しなくなる」という点では、移行はさほど困難ではないと言えるかもしれません。今回の学習指導要領改訂は、戦後はじめて学習内容の追加をともない、「現在やっていないことを学習するようになる」改訂です。後述しますが、これから2〜3年の移行期間は「教科書に載っていないことも学習するようになる」ということも起こります。
新指導要領へ移行が完了すると、前回の指導要領改訂で削減された内容がほぼ復活しますので、Bのボリュームの学習内容が追加されることになります。余談ながら、現在の学習量Fでの学習は、すでに7年を経過して児童・生徒たちに定着しているものと思われます。そうなると現在の学習量を基準としてIとすれば、従来のBの量は現在ではCを超える(同じ量なのに多いと感じる)量として受け取られるかもしれません。
また移行期間終了後は、小・中学校で授業時数が各学年とも週あたり1時間ずつ増えることになります。(小学校では、移行期間から実施されます。)しかし、週あたり2時間ずつ減らして削減した学習内容を、その中に戻していくということを考えれば、どうしても困難が予想されます。こうした事情も背景に置いて、「総合的な学習の時間」は大幅に削減され、中学校での「選択教科等」は原則廃止されていく方向です。
【新学習指導要領/学習内容についてのまとめ】
●これまでの改訂で…
●戦後これまで増やされることはなかった
●「学力低下」がとりあげられるようになってきた
●部分的に学習内容を増やす動きが出てきた
●今回の改訂では…
●学習内容が戦後はじめて増やされる
●増やされる学習内容は移行期間から先取りされる(先行実施)
次の頁では「移行措置と先行実施」について見ていきます。
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